僕

僕の家の隣に女の子が越してきたのは小四の夏休みだった。
彼女の家庭にはお父さんがいなかった・・・

お母さんは僕の目から見てもとても若かったのを覚えている。
違うクラスになったけど僕と彼女は仲良くなった。
彼女はあまり明るいほうではなく、女子の友達も少なかった。
本ばかり読んで親しい友人のいなかった僕と彼女は、お互いの家に遊びに行くほど仲良くなった。
そのうち彼女は愚痴を言うようになった。

彼女彼女

母親がすぐ殴る・・・


僕

うん


彼女彼女

同じクラスの女子が意地悪をする・・・


僕

うん


彼女彼女

好きな男の子ができたけど、その子はほかの女子にも人気・・・


僕

うん

最初は僕のほうがよくしゃべっていたけれど、この頃からは一方的に彼女が話し僕が聞くようになっていた。

ある日を境に彼女は学校に来なくなった。
好きだった男子の取り巻きたちに、いじめられていたのが理由だ。

彼女彼女

自分をいじめた女子が憎い ・・・


彼女彼女

いじめを見てみぬ振りしていたクラスの皆も憎い・・・

そして、現実味のない復讐やクラスメイトの悪口を延々と話し続けた。

僕

・・・


僕はただ黙って相槌を打っていた。

中学に入ってから彼女の素行が荒れ始めた。
夜遅くまで帰ってこないようになり、これ見よがしにタバコをすい始めた。
家庭環境も悪化し、深夜にいきなり親子喧嘩が始まったりもした。
一度は警察が彼女を迎えにやってきた。
この頃から近所と折り合いが悪くなり、中傷ビラや落書きなどの悪質な嫌がらせが彼女の家に行われた。
一度は郵便受けに刻んだ猫が入っていた。
僕も母に彼女と付き合うのをやめるよう言われた。

僕が高校を出たとき、彼女は部屋に引きこもるようになった。
僕も彼女の姿を見ることがめっきり減った。
めっきりふけこんだ彼女のお母さんに話を聞くと、
昼は絶対に出てこない。
ご飯は部屋の前においていく。
深夜になるとトイレに行くときだけ出てくる。
そんな生活を送っているようだ。
僕は久しぶりに彼女に会いにいった。

 

彼女彼女

帰れ


僕

・・・

彼女は僕に会うのを拒絶した。
一度なんかは、ドアがあいたと思ったら味噌汁をかけられた。
ちらりと見えた彼女はげっそりと青白くやつれていた。
絞った雑巾のようだった。

僕

・・・

僕は毎日彼女に会いに行った。
親とけんかした。
やっとできた友達と疎遠になった。
それでも毎日彼女の部屋まで会いに行った。

僕

今日も会いにきたよ。


彼女彼女

・・・

そのうち彼女は扉越しに話をするようになった。

彼女彼女

悪い仲間と付き合っていた・・・


僕

うん


彼女彼女

万引きが癖になって警察に捕まった・・・


僕

うん


彼女彼女

恋人ができたと思ったら、避妊に失敗して子供ができたとたんに逃げられた・・・


僕

うん


彼女彼女

助けてほしくて、母親に相談したら・・・
殴られた・・・


僕

うん


彼女彼女

子供をおろした・・・


僕

うん


彼女彼女

死のうと思った・・・


僕

うん


彼女彼女

手首を切った・・・


僕

うん

昔と同じ様に彼女が一方的にしゃべり続け、僕は相槌を打つ。
意見を求められたときは、なるべく無難な意見を言う。

そのうち彼女は部屋を出た。アルバイトも始めた。
だんだん性格も明るくなり始めた。
彼女のお母さんから泣きながらお礼を言われた。

ある日、彼女は近所の団地から飛び降りた。
下が植え込みだったことと、たいした高さじゃなかったために、一命は取り留めたが、
脊髄が傷ついたために、今後の人生は車椅子のお世話になるそうだ。

彼女彼女

ごめんなさい・・・


彼女彼女

親やあなたに迷惑をかけていたのがすごく申し訳なかった・・・
それで、飛び降りてしまった・・・


彼女彼女

本当にごめんなさい・・・


僕

うん
大丈夫だよ。


僕

・・・


僕

あの・・・


僕

初めて会った時から・・・


僕

君が好きだった


僕

結婚を前提に付き合って欲しい。


彼女彼女

本気?
私でいいの?
本当にいいの?


僕

うん


僕

君のことがずっと好きだった。


僕

(顔をゆがめてクラスメイトの悪口を言っていたときも・・・
悪い友達と付き合って荒れていたときも・・・
一方的に愚痴をしゃべり続けていたときも・・・
君が泣きながらお母さんが自分を殴ることを告白したときも・・・
引きこもって別人のようにやせたときも・・・
小学生の頃に君が好きな男子の名前をその取り巻きたちに教えたときも・・・
君の家のポストに入れる猫を刻んでいたときも・・・
足の感覚を失い白いベッドに飲み込まれそうに小さく横たわっている今も・・・)


僕

ずっと君が好きだ。

これで完璧に君は僕だけの『彼女』。

僕たち今度結婚します。

 

 

 

 

 

イラスト:ジュエルセイバーFREE http://www.jewel-s.jp/
出典:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?

幽霊幽霊

【注意!】
akira(ブログ投稿者)の独断と偏見で割と原文を変更しています。
てへぺろ♡


幽霊幽霊

でも、幽霊はずっとあなたが好きだ。


幽霊幽霊

スマホを見ているときも・・・
パソコンを見ているときも・・・
お風呂で頭を洗っているときも・・・


幽霊幽霊

ずっとあなたを・・・


幽霊幽霊

うしろから見ている♥


幽霊幽霊

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幽霊幽霊

最後に
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